私が初めて付箋感想本を作った話

自分は一般的な20代のオタクだ。フォローフォロワーが多いわけではない(二桁だ)自カプを語るときは饒舌になるし、読み専オタクとして自カプをそこそこ読んできたという自負はある。とは言え私はオタクとしては凡人だ。読み専オタク期間が長く、感想を送るなど数年前までは考えた事もなかった。

ある時とある動画にコメントした際たまたまそのコメントを拾ってもらい次の動画でお返事を貰った。

めっちゃくちゃに嬉しかった。

自分のコメントが作者を喜ばせたという事実に狂喜乱舞した。もともと誰かに何かをして喜んでもらうことが好きな自分に合っていると思った。
だって自分が感動したことをそのまま伝えるだけで感謝されるなんてこんなWIN-WINなことはないだろう。

それからは見る動画見る動画褒めるコメントを残していった。その人のTwitterを見て喜んでるツイートを見てはほくそ笑むとかいうことまでしていた。

そんなこんなで自分はTwitterを始めた。
Twitterにはたくさんの人がいる。
そしてたくさんの作品がある。

毎日毎晩自分がフォローしてる人の作品をリツイートしては自分のホームで褒めちぎった。
別に喜んでくれるかどうかはわからないが、だいたいリツイート後まで追ってきてくれる人は感想を好む傾向にあると自分は思っているし、実際喜んでもらえた。

直リプで褒めれば良いのかもしれないが、それだと人の目につくし、その人の作品を見るたび自分がそのリプライを見る羽目になる。
それは自分にとっては苦行だった。
だからリツイート後に感想を呟いていた。
すると段々自分に話しかけてもらえるようになり、少しずつ私は界隈に馴染んでいった。

その頃の相互さんはだいたいが自カプとは逆カプか、そもそも腐が苦手という方が多く私はキャラ単体萌の人として界隈にいた。もともと動画を作る人たちの界隈のため、動画に腐で語るのは厳禁が当たり前だった。規約でそうなっているし、自分も別に推しカプ目当てで見ていたわけではないからそれは問題なかった。

相互フォロワーさんと仲良くなりオフ会をする仲にまでなった。自分にとっては凄いことだった。ネットで知り合った人と会うなんて一生ないと思っていたからだ。初めてのオフ会で動画についてたくさん話し、やはり同じ趣味の友達が欲しかったんだなと感慨深くなった。しばらくはそれでよかった。


しかし初めてそのアカウントで、推しカプが同じ方と相互になった。その方が自由に推しカプ妄想を呟いているのを見て羨ましいな、と強く思ってしまった。

Twitterにいるとどうしてもそのカプを呟きたい衝動に駆られた。しかし私のフォロワーには推しカプのことを地雷と公言している人が多くいる。
私はアカウントを別に作った。自カプを自由に呟いても誰も傷つかない、不快な思いをしないアカウントにするためにプロフィールに推しカプ用のアカウントであることを明記して。

しばらくそのアカウントは壁打ちのように使っていた。楽しかった。自由に妄想をツイートできるのがこんなに楽しいなんて思わなかった。
しかし、誰かと頻繁に話すほど仲良くなったりはしなかった。
相互さんはいたが、低浮上だったりそもそも自分も不定期にしかTwitterにこない。カプについて誰かとそんなに語ることはなく、そのアカウントでは誰かを褒めちぎることもあまりしなかった。


そんな日々が半年ほど続いたある時、Twitterで付箋感想というものを見た。
こんな感想の伝え方があるのか、と感動した。
そもそも私は動画にコメントすることが好きだった人間だ。
同じように、動画にコメントする気持ちで推しカプ同人誌に感想を貼ってみたらどうだろう?という気持ちが湧いた。
そしてまた、同時期に感想がもらえなかったことで神がジャンル移動してしまった話を読み衝撃を受けた。

案外神呼ばわりされる方達も感想をもらっていないらしい。それはいけない、なぜかそう思った。自分にとって感想とは努力を認めることのように思っていたのかも知れないし、自分が行動を起こすことで救われる人が一人でもいるなら、なんていうおこがましい正義感からかもしれない。とりあえず書かなきゃ、と思った。

その次の日の仕事帰りに、推しカプの同人誌を買いに行った。
実は推しカプの同人誌を買うのは初めてだった。おもに支部の小説ばかり読んでいた。漫画の同人誌を買うと後戻りできない気がするという馬鹿な発想だったが、迷いなく感想用と自分用で2冊購入し近くにあった店で感想用の付箋とペンを買った。

初めてAさんの同人誌を読んだ。
もともと知っている方ではあったがAさんのWEB再録を読んだことがあるくらいで、新刊を買うのは初めてであった。(初めて推しカプ同人誌を買うのだから当然であるが)正直推しカプの同人誌を描いてる方なら誰でもよかったのだ。その時店に行って推しカプの同人コーナーで好みの絵柄で2冊以上手に入る本で表紙買いした。失礼かもしれないが、目的が感想本を書くことなのだからそうなってしまったのだ。


しかしてその本は最高だった。
いわゆる薄い本を読んだのはかなり久しぶりであった。
丁寧な絵と丁寧な人物解釈の上に成り立ったストーリー。そしてエッチ。これは凄い。素直にそう思った。
たまたま手に取った一冊であったが最高の一冊であり、運命だとすら思った。

そして感想を書こうと思った時、ハッとなった。
こういう感想をもらうのが嫌な人もいるだろう。渡しても大丈夫だろうかと。思うのが遅いのであるが、AさんのTwitterアカウントを見つけだし、フォローしてからマシュマロがないか探した。
マシュマロはあった。しかし最後の返信が大分以前のものである。とりあえずダメ元で「付箋感想本をお渡ししても大丈夫ですか?」という旨の内容を送ってみることにした。返ってこなかったときは仕方ないので、対面で渡す時に言うしかあるまいと思っていた。

数日後、奇跡的に返信があった。
渡しても大丈夫という旨の返信であった。
私はもうすでにお渡しする瞬間を思ってドキドキしていた。次に参加されるイベントの時に渡すつもりでいた。その日に合わせてない語彙力を絞って死ぬ気で感想を書いた。
ただ付箋感想には見本がない。当たり前だが何が正解か分からない中迷走しながらもとりあえず全ページに何枚も書いて貼った。失礼のないように、それでも自分が萌えたと伝わるように。

そしてイベント当日、付箋感想本を持ってイベントへと向かった。実はこの日が初めてのイベント参加であった。しかもサークルチェックなど全くしなかった。Aさんのスペースに行くためだけに新幹線に乗って行ったのだ。

Aさんのスペースだけ調べ他の人がいなくなったタイミングで渡しに行った。別にコミュ力が高くない私はいっぱいいっぱいになりながら会話して感想本を快く受け取ってもらった。

ほとんど記憶がないくらいには緊張していた。そもそもイベント初参加の癖して、感想本渡そうとか思いつくからである。よくもまぁそんな大胆なことを思いついたものだと後から思った。

そして初めての感想本つくりと初めてのイベントは終わった。ぽやぽやしていたため他のサークルさんを全く見て回らないという事をしでかしたが、とりあえず渡せただけ良いだろうと思った。

ここでとりあえず終わるはずだった。
終わるはずだったのだが。

私は感想本と共にお手紙を別で入れていた。一応そこにTwitterのIDを書いておいてあった。もし万が一何か失礼があった場合に、文句をつける先がないのはどうなんだろうと思ったからだ。

次の日、一件のDMが入った。
付箋感想本へのお礼だった。

詳細は省くが、付箋感想本への感謝であった。
とても丁寧なDMで本当にAさんに感想を書いて良かったと思った。

そして私は味を占めた。Aさんが参加するイベントを調べてその都度感想本を持っていった。
毎回暖かく喜んでもらえた。ここまで聞くとストーカーチックだがイベント参加自体はそんなに多くなく、TwitterではAさんにむやみに絡まないようにしていたのでイベント毎の交流と言った感じであった。

そして次は5月、そう思っていた矢先イベントが全てなくなった。
今流行りの感染症である。
延期になったものの世情を考えれば参加しないという選択をとる人が多い。
そして私自身も職業柄参加できそうになかった。

感想本を受け取ってもらう機会を失った私は感想本を書くのを一旦やめた。
しかし、感想を書くのはやめないでおこうと思って細々と少ない語彙で感想を書いては呟くという最初のスタイルに戻っていた。

そうするうちに腐垢の相互フォロワーが少しずつ増えてきた。

無料通話アプリで複数人とお話ししたりTwitterでお話ししたりする事で少しずつ相互さんが増えたのだ。
そしてある時、相互さんとその無料通話アプリで、自分がAさんに付箋感想本を作ってお渡しした事がある、という話をした。そしたら、その方がああ、Aさんにあげたなら喜んだでしょうねと何気なく言った。
DMでは喜んでくれているが、正直どこか不安もあったのでほっとした。

Twitterでも絡んでくれる方が増えるにつれ、浮上率がかなり上がった。そして推しカプの妄想ツイートも増えた。それに合わせてフォロワー数の多い、所謂界隈の中では有名な人とも相互になるなどご縁を頂くことも増えた。フォロワー数が全てだとは思わないが4桁〜5桁の方はまぁ神なんじゃないだろうかと思っている。(ちなみにAさんはそろそろフォロワー数5桁という神である。)

そんな折、Aさんからのフォローが返ってきた。
何度見てもフォローされている。
いやいやいやまさかと思ったが、今でもフォローされているので誤フォローではないのだろう。たぶん。きっと。私が最後に感想本を送ってから半年が経っていた。え???なして今???そう思ったが理由は怖くて聞けていない。きっとなんとなくだと思う。たぶん。


そして驚きはこれだけで終わらなかった。

私は推しカプにハマり5年以上経って、初めて推しカプの小説を書いた。まぁまぁな文字数があるし素人感のある文章だ。
恥ずかしかった事もありTwitterにも小説のリンクなどは書かなかった。

あげた事で満足して2時間後、支部に通知が入っているのに気がついた。私が書いた小説にブクマがついたという通知だ。こんな感じで通知がくるのだな、と思い見てみると、初めてのブクマは、感想本を渡したAさんだった。自カプの小説は支部で1万件を超えているような中で、である。


神が神すぎて神だった。


終わり